高血糖状態を長期間維持した状態で、その後数年数十年を経て糖尿病は徐々にその姿を現します。
上記の症状を経由し、糖尿病神経障害等の糖尿病合併症に移行して行くのです。
このように、糖尿病という病気は特定の部分が特定の症状を呈するのではなく、身体全体にあらゆる症状を引き起こします。
多くの病気には、「これと言った」症状がある事が理解出来ると思います。
しかし糖尿病においては、初期と言われる症状の内全身に現れるものが多く、しかも健常人が日常生活で起こすものであったり、軽い風邪等でも現れるものが大半です。
ここが糖尿病の困ったところになるのです。
病気を格付けする訳ではありませんが、命の危険に曝される可能性が高い病気については、その諸症状も特徴的なものが多く、大半の方が自分の健康を疑問視するでしょう。
しかし糖尿病にはこれらがありません。
罹患すれば生涯完治が出来ず、長い年月付き合って行かなければならない病気のヒントとしては、あまりに少ない、あまりに漠然とし過ぎているのです。
何が糖尿病の一番の問題点かと言いますと、症状だけを見て「明らかに自分が糖尿病である」と判断出来た時には、既に進行状態若しくは末期であるところです。
症状が何も無い状態での糖尿病の発覚は、概ね健康診断でのみなのが現状なのです。
多くは、進行状態から紆余曲折を経て少しずつ改善を図り、数年経由しようやく落ち着いてくるのです。
たしかに、糖尿病と診断されて直ちにこの1日2日で命の危険がある訳ではありません。
しかし、油断をすれば凄惨な結末が待つ糖尿病という病気は、もっと症状として「○○が痛い」「○○だけに異常」など、身体にヒントを与えても良い筈なのです。
これには理由があります。
糖尿病という病気は、血管や流れる血液に深く関わりがある事は分かると思います。
身体全体くまなく行き渡る血液に異常を起こす事により、「最終的に」「いずれ」身体への異変が現れますが、「直ちに」何かしらの症状が現れる訳ではないのです。
血液成分の大半に対し、直接的なダメージを与える場合は別ですが、そのような病気への罹患率はそもそも低い上に病気の種類も少ないのです。
現れる症状に「これと言った」特徴が無いのはそういう理由です。
ちなみに、他の血管や血液の病気でも近い現象が起こります。
その中で代表的なものと言えば「白血病」です。
これも、水面下で進行する恐ろしい病気で、糖尿病と同じく全身にその症状が現れます。
しかし、白血病は亡くなる確率が高い病気とは言えそもそも罹患率が低すぎる上に、完治の可能性も十分見込めます。
よって、完治するしないの部分だけで言えば、生涯完治する事のない糖尿病とは同列に語れません。
水面下で進行し、発症した事すら分からず、症状が現れた頃には完治するしないの意味で「手遅れ」なのが糖尿病なのです。
しかし唯一特徴的なヒントがあります。
それは血糖値です。
血糖値の異常を事前に把握する事により、糖尿病を予防出来るのは誰もが知るところです。
しかしこの「血糖値の異常」という言葉・・・糖尿病患者であれば敏感であっても、多くの健常人は軽視します。
何故なら、血糖値が上がったところで直ちに何かが起こる訳ではないからです。
そして何より、「自分は糖尿病と無縁」という根拠の無い考えを信じて疑わないのです。
全身に症状が現れてからでは遅いという現実を知るべきです。
症状が現れた頃には糖尿病であり、既に進行状態であるこの病気は、僅かなヒントで警戒心を持ち対処して行かなければならないのです。
監修:宮座 美帆
経歴&活動:
平成25年 臨床工学技士の資格取得。
同年より、広島大学病院に勤務し循環器・呼吸器・代謝内分泌などの疾患を対象に多くの仕事に従事し経験を積む。
現在は医療に関する執筆・監修をこなす医療ライターとしても活動中。
病院・クリニック・企業のHP内コラム等も担当し、読者のみなさまが「病院を受診するきっかけ」作りを積極的に行う。