今までにもお伝えしてきましたが、糖尿病は生活習慣病であり、完全に治癒することのない病気です。
仮に遺伝的にインスリンの分泌が少ない体質の人も、そこに悪い生活習慣が加わらなければ発症しないのです。
ですから、治療には生活習慣の改善は必須。
これをせずしていきなり内服やインスリンを導入しても、悪化を食い止めるのは難しいでしょう。
通常は薬に頼らずに、生活習慣の改善だけでHbA1Cの値が改善できるかをまずみます。
それでだめだとなった場合に、内服から始めていくことが望ましいですね。
ところが、初診の時点でHbA1Cが既に10%を超えているような場合は、のんびりと生活習慣を改善してから…なんて言ってはいられません。
すぐに内服なりインスリンなりの治療が開始されます。
自覚症状は全くないけれど健康診断で少し正常値を外れたからと受診した場合、自分の健康管理に関心がありますから、そこから生活習慣を改善することで、HbA1Cが正常値に戻って来ることはあります。
今はインターネットで少し検索すれば、いろいろな知識を得ることができます。
健康に関心がある人は、自分で情報を得て工夫していくものです。
ということは、初期の段階では指導が主な内容になりますね。
糖尿病を未受診のまま放置したり、内服治療を受けながらも生活習慣は改善しなかった場合、糖尿病はどんどん進行します。
血液データの悪化だけでなく、合併症が出てきたら治療も段階を進んでいきます。
つまり、足のしびれが出て皮膚色が悪くなったり、視力障害が出てきたり…ということですね。
これらの症状は突然起こるわけではなくて、徐々に進行いていきます。
足が黒く壊死するまで放置して受診する人もいます。
神経障害によっては痛みがありませんから、放置できるんですね。
外来通院している場合、内服治療だけで効果が得られなければ、インスリン導入に踏み切ることになるでしょう。
大抵ここまで進む人は、インスリン導入と言われても「ふーん」で終わってしまうことが多いですね。
この後自分の人生がどうなっていくのか、将来像を描くことができないのです。
糖尿病がどんどん進行していくと、腎臓の血管が破壊されて腎臓が働きを失います。
これを腎不全といいますが、この段階になると尿量が減ってきますから、身体全体がむくんで来ます。
なかには普段の体重よりも5キロ、10キロと増加している人もいます。
そうなると、この先生きていくには人工透析を避けることはできません。
透析治療をしないと、どうなっていくでしょうか?
上の症状が出る前に、脳梗塞・心筋梗塞を起こしてある日突然亡くなることもあります。
逆に既に脳梗塞を起こしていて、それで糖尿病を指摘されたという人も、実はたくさんいます。
糖尿病には段階を追った治療があります。だからこそ、外来通院している間は内服薬があるからいいじゃん、となりがち。それが進むと今度は面倒だけど、インスリン打っていればいいんでしょ、となります。
さすがに息苦しさが出て来るとなんとかしてくれとなるけれど、透析を開始してしまえば透析を受けてればいいんでしょ、となっていきます。
初期の段階で食い止めることができれば、命に直結することはないし、週3日半日の透析通いもしなくて済みます。
脳梗塞を起こして片麻痺を起こしたり家族に迷惑をかけることもないのに、人間というのは、そうなってみないとわからないものなのですね。
治療は確かに存在します。しかし、何よりも大事なことは本人の自覚と生活習慣の改善であることは、肝に命じて欲しいですね。
糖尿病の治療は、受診した時点でどこまで進行しているかで変わってきます。
しかし、あくまでも生活習慣病ですから、これを改善せずに治療を行っても無意味というもの。
どんどん糖尿病が進行して治療もどんどん進んで、そして年齢相応の生活ができなくなっていく…ということを忘れてはいけませんね。