糖尿病があれば赤ちゃんに奇形ができると聞いたことありませんか?
お母さんの糖尿病がきちんとコントロールされていないことと、お母さんに腎症や網膜症があると、妊娠によってその合併症は著しく悪くなるばかりでなく、胎児にも影響があります。
高血糖状態が続くことにより、腎臓の機能が損なわれてしまう病気です。
腎臓は尿を作るという、大変重要な機能を果たしていますが、糖尿によって腎臓が影響を受けると、この機能が弱り、尿を作れなくなってしまうことがあります。
そうすると、人工透析という形で、尿を外に出す必要が生じてきます。人工透析は、大体週に3日ほど病院に通い、数時間横になりながら、体から溜まっている尿を抜き取る治療です。
眼球の中にある、視神経の膜(網膜)が薄く、弱くなる病気です。
網膜は、瞳から入った光の明暗や色を感知する組織で、細かい血管が密集しています。
そのため、高血糖状態が続くと血管の閉塞障害と血液凝固異常がおき、眼内の血管が徐々に詰まって、網膜に栄養や酸素が届かなくなります。
そのような状態になると、網膜に新しい血管が生まれ、酸素不足などを補おうとします。
しかし、この新生血管はもろく、少しの刺激でも出血し、重篤化すると網膜剥離を起こし、失明してしまいます。
母親の血糖コントロールが悪く、例えばHbA1dが7%を超えているような場合、あるいは、初診時空腹時血糖値が120mg/dLを超える場合は赤ちゃんが直接影響を受けておきる合併症は、生まれた時、低血糖や呼吸障害、低カルシウム血症、黄疸、多血症、巨大児、奇形、といったものがあります。
奇形児が生まれると本人のみならず、家族を含めて皆さんに大きな悲嘆をもたらします。
そればかりか1970年代までは奇形を持つ赤ちゃんは、亡くなる確率が高く新生児が亡くなる大きな原因となっていました。
糖尿病があるだけでも負担を感じているのに、お子さんの奇形で負担がより大きくなることは、なんとしても避けたいと思うのは当然ですよね。
糖尿病による胎児奇形は妊娠7週以前に起こると言われています。
胎児の細胞が正常に発育するためには母親の血糖が高すぎてはいけないのです。
受胎して7週目というと、女性はやっとご自分が妊娠していることに気づく時期ですから、奇形を予防するためには、妊娠前から血糖コントロールをきちんと守っておくことが大切です。
胎児奇形を抑制するためには、「計画妊娠」が欠かせません。
過去1、2ヶ月の血糖値の状態がわかる値です。HbA1cを測定することで、 最近の糖尿病の治療状況がわかります。
胎児の基本的な器官形成は、受胎後ごく初期の数週間でなされます。妊娠したことにご本人が気付くのは通常、月経周期を越えて4週間ほど経過してからなの で、計画妊娠でない場合、妊娠に気付いた時点で、高血糖下での器官形成が既にかなり進行しています。奇形のリスクが高くなってしまうということです。
生まれてくる赤ちゃんの奇形を無くすために血糖コントロールを良くしてから、少なくともHbA1c(グリコヘモグロビン、1~2ヵ月の血糖平均値)が7% 以下になってから受胎すること。
母体に糖尿病網膜症や腎症があると妊娠によってこれらは悪化するので、この2つの合併症を進行させないために糖尿病合併症を再チェックし、必要があればきちんと治療し、主治医の許可を得てから受胎する。
この臨床システムを計画妊娠と呼んでいます。
計画妊娠で胎児奇形は抑制できるということです。
監修:宮座 美帆
経歴&活動:
平成25年 臨床工学技士の資格取得。
同年より、広島大学病院に勤務し循環器・呼吸器・代謝内分泌などの疾患を対象に多くの仕事に従事し経験を積む。
現在は医療に関する執筆・監修をこなす医療ライターとしても活動中。
病院・クリニック・企業のHP内コラム等も担当し、読者のみなさまが「病院を受診するきっかけ」作りを積極的に行う。