漢方薬などの治療は「東洋医学」と呼ばれ、かつてはある種の「プラセボ効果」という括りで考えられており、あまり病気の有効な治療としては考えられていませんでした。
しかし最近ではそういった考え方を見直す動きが高まっており、漢方への再評価が進められています。
漢方薬の中にも、血糖値を下げたり、食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できるものがあります。
血糖値が高い状態や、それが重症化して糖尿病となった場合に、まず考えられるのはインスリン注射や服用、そして運動療法と食事療法という治療が待っています。
現に、そうした治療を受けている方も数多いのですが、漢方医療を取り入れている病院やクリニックでは、これと合わせたり、漢方薬での治療を行っているところがあります。
主に使われている漢方薬は、「白虎加人参湯加減方」という漢方です。(びゃっこかにんじんとうかげんほう、と読みます。)この漢方には、漢方の主成分としてよく用いられる甘草や人参、石膏に合わせ、黒豆や山梔子、山薬(ヤマイモ)などが使われています。
これらの原材料となっている物質的がそれぞれ効果を発揮し、全体として血糖値や糖尿病への有効な治療となるということです。
合わせて用いられる漢方としては、清心蓮子飲という漢方が有名です。(せいじんれんしいん、と読みます。)これは血糖値そのものというよりも、泌尿器に効果があり、尿道や尿路の炎症、熱、腫れを引かせる効果があるとされています。
また、排尿痛や残尿感などにも効果があるといわれ、尿による糖の排出の補助、と考えると理解しやすいでしょう。
含まれている成分としては、尿の排出を助ける”茯苓”や”車前子”、熱や炎症を抑える”麦門冬”、気分を落ち着ける”蓮肉”などを加えた漢方です。
こうした漢方を使用することで、インスリン注射などを行わず漢方療法のみで治療するというケースもあるでしょうし、他の療法と組み合わせて血糖値の改善を目指すという治療もありえます。
とはいえ、現在血糖値に悩んでいるという方に対して、即座に漢方薬を飲み始めるということを推奨する医師や薬剤師はいないでしょう。
漢方の処方というのは、その人の体質や特徴に合わせて処方できる/できないという判断をしますし、血糖値の値だけでは、どのような治療を勧めるべきか、というのを決定できないからです。
また、当然のことながら、食生活や運動習慣に問題のある方が漢方薬を飲み始めてみたところで焼け石に水、の言葉のとおり、根本的な解決は望めないと考えて間違いありません。
漢方薬は、処方薬と比べると漢方薬局などで手に入るというケースもあり、一見手軽なのですが、「飲み合わせ」という問題もあります。
最終的に漢方療法を開始するかどうかは医師やクリニック、そして薬剤師と相談して判断してもらうべきことであり、治療を受ける側が決定することではありません。
また、先ほども述べましたように、「何が原因で血糖値が高いのか」ということこそ、血糖値の改善や糖尿病の治療には不可欠な情報となります。
たとえば食生活、飲酒やお菓子の食べ過ぎ、メタボリックシンドロームなどの疑いがある場合には、食事療法と運動療法の双方が必要となってきます。
これは自分自身で判断できることではありません。
また、食後血糖値が高くなるというのであれば、インスリンが適切に分泌・生成されていない可能性と、分泌・生成されたインスリンが適切に機能していない、つまり細胞側のほうで”インスリン抵抗性”ができてしまっている、というケースとがあります。
はっきりと言ってしまえば、これらの情報を正確に把握できるのは医師や薬剤師のみです。
そのため、自己判断で漢方療法を開始するのではなく、事前の相談や治療方針の合意が不可欠ということになるのです。
「生活習慣病」の名前に偽りなしで、「こうすれば簡単に血糖値は下がる」という考え方ではなく、「今のままの生活習慣を続けていては、血糖値は間違いなく改善しない」という考え方をしっかりと持ち、生活スタイル全体を見直すという姿勢が、糖尿病、そして高くなってしまった血糖値の改善には不可欠といえるのです。