昨今インターネットやテレビの健康番組で、いろいろな情報が溢れています。
糖尿病を「おしっこに糖が出たら糖尿病」と思っている方は少ないでしょう。
しかし、中にはまだ尿に糖が出るまでは治療をしなくていいと思っている方がいるのは事実。
まずは糖尿病について、正しい知識を持つことが必要です。
会社員なら毎年会社で健康診断を行いますね。
おそらく血液検査があるため、前日夕飯のあとからは絶食の指示が出ているかと思います。
それは、血液検査に食事の影響を受けてしまう項目を含んでいるから。
食事の影響を受けてしまう項目としては、コレステロール、中性脂肪、血糖ですね。
健康診断の目的の1つは癌のような大きな病気の早期発見、もう一つは生活習慣病(おもに糖尿病)の早期発見をすることです。
血液検査で生活習慣病の診断を正確にするために、食事を摂らないでくださいと言われるのですね。
話を糖尿病に戻しましょう。
糖尿病の検査は、血糖(空腹時血糖)と検尿で十分でしょうか?答えはNoです。
血糖と尿だけでは、既に糖尿病を発症してしまった人に「医療機関を受診しなさい」と言うことはできても、予防にはなりません。
それでは遅いのです。
糖尿病が進行し、腎臓にまで影響してから診断されては、健康診断の目的を果たせませんよね。
では、何で判断するのが糖尿病の早期発見・予防につながるのでしょうか?それは、HbA1cです。
耳にしたこともあると思いますが、糖尿病治療・早期発見に重要な項目は、このHbA1cなのです。
HbA1Cと、食事抜きで採血した空腹時血糖には、どういう違いがあるのでしょうか?
なぜ、血糖ではだめなのでしょう?
血糖というのは、血液中を漂っている糖分のこと。
これをグルコースということもあります。
食事を摂ったあと、血液中には大量の糖分が流れ込みます。
糖はインスリンと手を組んで、細胞内に栄養として取り込まれます。
インスリンが足りないために細胞内に取り込むことができずに、血液中にあふれてしまうのが、高血糖の状態です。
食事を摂らなければ、血糖値はどうなるでしょう?
もちろん、低くなります。
健康診断で当日の朝食を抜いた状態、つまり空腹時血糖で測定しているのですから、低くなって当然です。
さらに夕飯を控えたり抜いたりすれば、血液検査の結果は「見かけ上」は正常範囲に入ってしまいます。
今度はHbA1Cについてお話しましょう。
HbA1cは何を意味するものでしょうか?大雑把に言ってしまうと、過去2か月間の平均血糖コントロールの状況を推定するものです。
成人の赤血球に含まれるヘモグロビンの90%を占めるHbAは、通常は糖と結合していません。
それが、高血糖の状態が続くことでHbAと糖が結合してHbA1cになるのです。
そしてこの状態が長く続くことで、結合はより強くなり、赤血球の寿命である120日間にわたり、血中に存在します。
つまり、健康診断前日にいくら空腹に耐えて悪あがきをしても、空腹時血糖はごまかせてもHbA1cはごまかせないということです。
過去2か月にわたる生活習慣を反映してしまうのですからね。
もしHbA1cが正常であるならば、その人は2か月以上規則正しい生活習慣を維持していたことになります。
逆に考えると、健康診断の2か月前から節制できる人は、生活習慣病である糖尿病に罹るリスクは、極めて低いのです。
いかがでしたか?
健康診断の採血にはいろいろな項目が含まれており、何がどういう意味を持っているのかわかりづらい面があります。
その点血糖というのは皆さんがイメージしやすいので、理解しやすいというメリットがあります。
ただし、いくら食事を抜いて採取した空腹時血糖であっても、「見せかけの正常」を生み出してしまうことになります。
ですから、糖尿病の予防や早期発見には、HbA1Cが最重要項目なのです。