糖尿病の症状は、大きく2つにわけられます。
糖尿病は、血液中の糖濃度を下げるインスリンというホルモンが足りない(または、出ていても、働きが弱い)ため、血液中の糖濃度が高い状態が続きます。
そのため、体は、糖濃度を下げるために大量の水を飲んで下げようとします。
その結果として、大量の尿が出ます。血糖値が下がらない限り、飲んでも飲んでも尿として出る一方なのです。
その尿はあまい臭いがします。
尿により大量の水分が排出されてしまうので、のどが異常に渇きます。そのためにやたらと水分を取るようになります。夜寝ていても、のどの渇きで起きてしまうほどです。
のどの渇きという症状は、糖尿病のもっとも代表的な症状です。のどが渇くので水分を大量に取り、そして尿の量が増えて水分を大量に排出してしまい、またのどが渇き大量の水分を取る、という状態になってしまいます。
尿の中には、糖だけでなく、大事な筋肉や骨が溶けて出て行きます。
また、細胞や筋肉の働きと関係の深い食塩などのミネラルも尿に出てしまいます。
このため、脳に回る血液量が減り、頭がボーっとしたり、だるくなったりします。
インスリンの作用が不足するために、ブドウ糖をうまくエネルギーとして利用できなくなるので、いつも疲れているように感じたり、全身がだるくて動きたくない、などの症状が現れます。
要は、体がだるくて元気が出ないというのは、それは栄養が細胞に届いてないのです。
体がだるいだけでなく、気持ちもしんどくなっていきます。精神的にもまいってしまいます。
糖尿病のはじめの頃には、一時的にインスリンが過剰に出る時期があり、食欲が旺盛になります。調節がうまくできなくなるようです。
特に甘いものを好むようになるようです。
糖尿病が進むと、食欲旺盛でよく食べているにもかかわらず、急に体重が減ることがあります。また、食べても食べてもお腹がすきます。
糖尿病になると、食事により取り入れた糖質をエネルギーに変えることがうまくできなくなるので、すぐに空腹を感じてしまいます。
急激に減少するのは脱水のためと言われています。
高血糖になると、ブドウ糖の代わりに筋肉や脂肪をエネルギーとして使うようになり、さらにエネルギーを欲して、すぐにお腹が減ってしまいます。ブドウ糖というエネルギーを排出してしまい、体に蓄えることができず、さらに体の脂肪やタンパク質をエネルギーとして使ってしまうので痩せてしまうんですね。エネルギー(カロリー)に換算すると、約800~1200kcal ぐらいを排出していることになります。
体重が急激に減る場合は、極度のインスリン不足である可能性が高いです。そのまま対処しないでおくと、昏睡(こんすい)の状態(糖尿病性昏睡)になってしまい大変危険です。
ちなみに昏睡とは、意識を消失して目覚めない状態で、とても危険な状態です。
高血糖のために脂肪が落ちて、体重が減少するのは健康的ではありません。糖尿病による体重減少は、標準体重以下になってもまだ減少をつづけるのが特徴で、病的と言えます。
血糖値が高い状態がずっと続いているということです。血糖値が高いということは、血液の中に、たくさんのブドウ糖が存在しているということです。
本来食べた物は胃で分解され、ブドウ糖という栄養分になり、腸から血液へと出て行きます。
そして今度は、ブドウ糖は血液の流れに沿って、体中 の細胞内に入って行き、細胞が栄養をとり、わたしたちは元気になる、という仕組みになっています。
しかし、食べ過ぎや生活習慣の乱れ、ストレス、体の不調 などの様々な理由によって、ブドウ糖が細胞内に入らず、血液中に余ってきます。これが、血糖値の高さにつながっています。
血液の中に、たくさんのブドウ糖が余っているということは、血液がドロドロ、ネバネバしてくるということです。
糖尿病の患者さんが起こしやすい動脈硬化によって、特に足指の血液の流れが悪くなり、「壊疽(えそ)」といって、指が腐ってしまい、切断しなければならなくなることさえあります。
糖尿病が進行して、腎臓に障害が起こる「糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)」になると、腎臓の機能が低下するため、血液中のタンパク質が尿中に排せつされ、足がむくんだり、血圧が高くなるなどの症状が起こります。
血糖値が高い状態が続くと、体の抵抗力が落ち、細菌に感染しやすくなります。また、かかると治りにくくなります。
特に男性に言えることですが、性欲が急激に低下します。性欲というのは身体が丈夫であっておきるものなので、糖尿病で体力が低下すると性欲の減退という形で表れます。
物が二重に見えたり、目がかすんだり、急激に視力が落ちる、目が疲れやすい、などの症状は、糖尿病の3大合併症の 1つである「糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせいもうまくしょう)」がかなり進行することで起こる自覚症状です。
糖尿病性網膜症を治療せずに放置すると、最悪の場合、「失明」してしまいます。
特に、夜間に手足の先が痛みます。手足の先がピリピリと痛んだり、針で射されたようなチクチクした痛みがあります。
皮膚を虫が這っているような感じがします。
足の裏に何か張り付いているような感じがあります。
足の中に棒が入っているような感じがあります。
温度の感覚がなくなり、熱さがわからず、火傷をしてしまうことがあります。
糖尿病による知覚神経の障害により起こります。糖尿病の 3大合併症である「糖尿病性神経障害(とうにょうびょうせいしんけいしょうがい)」にあたります。
ふくらはぎや手のひらが急に引きつって、痛いような感じがします。(特に、夜間に多く見られます)
手や足の筋肉が落ちたり、痺れる感じがします。これによって、歩くことが少なくなって行きます。
立ちくらみは、糖尿病により自律神経がおかされることで起こります。ちなみに、立ちくらみは「起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)」とも呼ばれます。
また、自律神経がおかされると、異常な汗、冷え・ほてり、下痢・便秘などの症状が起こることもあります。
糖尿病による自律神経の障害は、「糖尿病性神経障害」です。
糖尿病になると、体の抵抗力が低下するので、傷が治りにくくなったり、化膿(かのう)しやすく(膿みやすく)なります。
糖尿病が進行して、腎臓に障害が起こる「糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)」<・になると、腎臓の機能が低下するため、足がむくんだり、血圧が高くなるなどの症状が起こります。
特に女性にみられる症状に、「陰部のかゆみ」があります。これは「カンジダ」とよばれるカビが繁殖しやすくなるために起こります。
糖尿病の初期は自覚症状がないため、健康診断で指摘されてはじめて気づく人が多いです。
通常、健康診断では空腹時に採血・採尿をして検査します。
糖尿病の指標となる値はいくつかありますが、代表的なものは「空腹時血糖値」「食後2時間血糖値」「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」「尿糖」などです。
ブドウ糖負荷試験とは、75gのブドウ糖液を飲んで、その後の血糖値の変化を調べる検査です。
2時間経過後、血糖値が200mg/dL以上であれば、糖尿病型と診断されます。
ブドウ糖負荷試験は、食後に血糖値が急上昇するタイプの糖尿病を検査するのに有効とされています。
採血して血糖値を測定する糖尿病の検査の基本で、通常の健康診断では朝食を抜いた空腹時に採取し、検査をした時点での血糖値が分かります。
血糖値による糖尿病の診断の中では最も基本的な検査方法です。
血糖値 | 診断 |
---|---|
126mg/dL以上 | 糖尿病型 |
110 ~ 125mg/dL | 境界型 |
70 ~ 110mg/dL | 正常型 |
食後2時間血糖値とは、食べ始めから2時間後の血糖値のことです。
これは食べた物のおよそ半分が腸に移動する頃とされています。
食後2時間血糖値は、近年では空腹時血糖値よりも重要視されています。
血糖値 | 診断 |
---|---|
200mg/dL以上 | 糖尿病型 |
140 ~ 199mg/dL | 境界型 |
140mg/dL未満 | 正常型 |
2~3ヶ月間の平均的な血糖値を反映する値で、血糖値と同じく採血して測定し、血糖コントロール状態を判断する指標として最も注目されています。
血糖値が検査時点での血糖レベルの瞬間値であるのに対し、HbA1cは一定期間の血糖コントロール状態を反映します。
ヘモグロビンの寿命は約4ヶ月であり、HbA1cは最近数ヶ月の血糖の推移を反映する指標とされています。
このため、HbA1c検査では空腹時血糖値では見過ごされやすいタイプの糖尿病を診断することができます。
10.0(%)以上 | 非常に悪い |
8.0 ~ 9.9 | 悪い |
6.6 ~ 7.9 | やや高め |
5.8 ~ 6.5 | 良い |
5.8未満 | 健康な人の値 |
尿検査で尿にどれくらい糖が排泄されているかを見ます。
血液中のブドウ糖は増え過ぎると尿に排泄されるため、血糖の状態が間接的に分かります。
健康な人の場合は、尿に糖が出ることはありませんが、糖尿病・高血糖症の人の場合は血液中で使われないブドウ糖の量が多くなり、尿糖として排泄されます。
尿糖は通常、血糖値が約170mg/dL 以上にならないと検出されないため、実際は糖尿病の人でも、空腹時には170mg/dL 未満になっていることがあるので注意が必要です。
また、腎機能が低下している場合などは、血糖値が170mg/dL 以上あっても尿糖が検出されないこともあります。
したがって、尿糖が正常だからといって、糖尿病ではない、血糖コントロールが良好である、などと思い込んでしまうのは危険です。
眼底検査とは眼球の毛細血管を検査し、糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の発症の有無を調べる検査です。
糖尿病になると高血糖状態の血液が眼の血管を傷つけます。
眼底検査では血糖値を測定するわけではないので、糖尿病そのものの診断をするわけではありません。
しかし、眼底検査では失明の可能性のある糖尿病性網膜症の発症を調べるという意味で、非常に重要な検査であと言えます。
監修:宮座 美帆
経歴&活動:
平成25年 臨床工学技士の資格取得。
同年より、広島大学病院に勤務し循環器・呼吸器・代謝内分泌などの疾患を対象に多くの仕事に従事し経験を積む。
現在は医療に関する執筆・監修をこなす医療ライターとしても活動中。
病院・クリニック・企業のHP内コラム等も担当し、読者のみなさまが「病院を受診するきっかけ」作りを積極的に行う。