糖尿病は、世界中で患者数が増加している生活習慣病の1つです。さまざまな病気と関係があるといわれ、腎臓、心臓、脳血管系などの合併症も多くあります。
合併症を発症すると、患者の生活の質を著しく低下させます。そして、少子高齢化や食生活・運動習慣の変化に伴い、今後も糖尿病患者数は増加の一途をたどるといわれています。糖尿病は、合併症や他の病気との関連性も高く、糖尿病患者数の増加は、現代社会における重要な健康問題なのです。
本記事で、糖尿病の患者数が増えている原因を少しでも理解して、今後の健康管理に役立てていただければ幸いです。
2021年12月に、国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:以下IDF)から発表された「世界の糖尿病に関する最新の調査をまとめたIDF Diabetes Atlas第10版」によると、2021年の世界の糖尿病人口は5億3700万人。成人の10人に1人が糖尿病であることが示されています。そして、日本の糖尿病人口は、2021年1100万人と推定され、世界第9位でした。[1]
厚生労働省で行われている「国民健康・栄養調査」では、糖尿病の総患者数(継続的に医療を受けている患者数)が579万1000人にのぼります。[2][3]
また、2016年「国民健康・栄養調査」の結果、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)は、合わせて約2000万人いるといわれています。[4]
新型コロナウィルスにより、2020年、2021年度の「国⺠健康・栄養調査」が中⽌となりました。そのため、2019年の有病者数は、これまでの「国⺠健康・栄養調査」のデータを用いて、厚生労働科学研究において推計し、約 1150 万⼈と推計されました。[5]
糖尿病の有病者数は、1997年以降増加傾向です。しかし、「健康日本21(第二次)」最終評価報告によるとその増加率はやや緩やかになっているのです。
前述したとおり、糖尿病の患者数は、世界的に増加し続けています。特に2型糖尿病の患者数が急増しており、90% 以上は2型糖尿病です。
これは社会経済的・環境的・遺伝的要因によって引き起こされます。2型糖尿病の増加の主な要因は以下のとおりです。[6]
都市化による身体活動量の減少 |
高齢化社会 |
肥満の増加 |
急速な発展と都市化により、食生活や運動習慣が変化しました。この影響で、肥満の増加、運動不足、不健康な食生活となり、子供や働き盛りの世代の糖尿病が増加しているのです。
その他にも、喫煙や睡眠の質・量の低下、うつ傾向や精神的ストレスが発症の危険因⼦としてあげられています。
原因や危険因子から見てわかるように、糖尿病と生活習慣には密接な関係があります。生活習慣の改善により、発症や悪化を予防できるのです。
糖尿病は、眼や腎臓、心臓、脳血管など以前から関連があるといわれている合併症のほか、最近ではがんや歯周病など糖尿病以外の病気との関連があることがわかってきています。
日本では、糖尿病を重要疾患のひとつと位置づけて、健康増進法に基づき「健康日本21」を定めています。そのなかで、合併症の減少、糖尿病の適切なコントロール、発症予防・対策の各指標を掲げています。
この取り組みにより「糖尿病の可能性が否定できない人」は、2007年をピークに減少傾向です。しかし「糖尿病が強く疑われる人」は依然増加傾向であり、我が国の人口構成の高齢化や肥満者の増加に伴って、今後も増加することが予測されています。[7]
これら「健康日本21(第二次)」の結果をふまえ、健康日本21(第三次)では「糖尿病の発症予防及び適切な治療による重症化予防を通じて、最終的には国民の健康寿命の延伸を目指すこと」を目的としています。
そのために、糖尿病の発症予防である「一次予防」、糖尿病の適切な治療による合併症予防の「二次予防」、合併症による臓器障害の予防・生命予後の改善の「三次予防」、それぞれの項目で目標が設定されました。
具体的には、下記7つの目標をあげて、さまざまな取り組みがおこなわれています。[7]
糖尿病の合併症(糖尿病腎症)の減少 |
治療継続者の増加 |
血糖コントロール不良者の減少 |
糖尿病有病者の増加の抑制 |
メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少 |
特定健康診査の実施率の向上 |
特定保健指導の実施率の向上 |
このように、一次予防から三次予防まで、糖尿病及びその合併症に関する対策を切れ目なく講じていくことで、糖尿病の早期発見・治療につなげるために取り組んでいます。
さらに、糖尿病有病者が多いにもかかわらず、継続的に受診や治療ができない背景には、働き盛り世代の受診が難しいこと、自覚症状が乏しいことがあげられています。
発症後にコントロールが難しいことから、健康診査で無症状の糖尿病患者をいかに定期受診に向けるかが重要になるのです。
糖尿病は、自覚症状がわかりにくい疾患です。
そのため、健康診断で血糖値の異常を指摘される、他の病気で医療機関を受診した際に指摘されるなど、糖尿病と気づかずに悪化している方も多くいます。さらに、自覚症状が乏しいことで「糖尿病」と診断されても治療を継続できないことが多いのです。
糖尿病は、一度発症すると完全には治りません。さまざまな病気と関係があり、合併症も多くあります。合併症や他の病気も発症してしまうと、生活の質を下げてしまうことになることが、最近の研究でわかっています。そのため、糖尿病の予防が重要です。
糖尿病は予防可能で、早期発見し、継続した治療を受けることができれば悪化を防げる疾患です。糖尿病を予防するために、私たちがまずできることは、定期的な健康チェックや生活習慣の見直しです。
これらをおこなうことで、糖尿病の予防だけでなく、他のさまざまな疾患のリスクを軽減します。健康づくりの観点からも、生活習慣や環境の改善をおこなっていきましょう。
前述したとおり、糖尿病の患者数は増加の一途をたどっています。その背景には、都市化や高齢化のような社会的要因だけではなく、食事や運動不足などの生活習慣の変化も大きく関わっています。
現在日本でも「健康日本21」をはじめとした、さまざまな対策はとられているものの、大きく効果は表れていません。今後も高齢化や都市化も進み、糖尿病患者数はさらに増えていくと考えられています。
一人ひとりが現状を理解し、自分の健康を守るために、まずは特定健診を受ける、運動習慣をつける、規則正しい食生活など、予防することから始めましょう。
本記事が、糖尿病のことを理解できるきっかけになり、みなさまの健康管理に役立てて頂ければ幸いです。
医療・取材ライター、病院薬剤師。
大学卒業後、総合病院に勤務し、内科・泌尿器科・透析科・循環器科での服薬指導
を経験。現在は未就学児2人を子育てしながら病院薬剤師として従事、現場経験をもとに医療ライターを行う。
2015年 一般社団法人 日本糖尿病指導療法士認定機構 日本糖尿病指導療法士取得。
会社名 | 合同会社第一Web |
---|---|
代表者 | 加藤 洋輝 |
所在地 | 〒003-0002 札幌市東札幌2条5丁目3―15 ドルチェ富士1F―B |
主たる業務 |
|
資本金 | 350万円 |
ご質問やご相談に対し、時代の流れに流されることなく、伝統的で人間味のあるアプローチを大切にしています。
LINEでのお問い合わせにも、ボットやAIを使わず、一人ひとりのスタッフが心を込めて直接対応いたします。
お客様の声に耳を傾け、それぞれのニーズに丁寧に応えていくことをお約束します。
以下のリンクから公式アカウントを友だち追加して、分からないことや相談したいことがありましたら、トークルームからお気軽にお問い合わせください!
メッセージをお待ちしています。