HbA1cの基準値って?

糖尿病というとすぐさま思いつく検査は、血糖値とか検尿ではないでしょうか?
実は、糖尿病の早期発見・早期治療には、食事摂取に影響のないHbA1cという血液検査が主となります。
血糖値は食事の影響を受けてしまうし、検尿で糖が出る頃には遅すぎるせいです。

このHbA1c、簡単に言うと血糖値の平均を表すもの。
ただし万能ではありません。
一見正常でも、詳しく調べてみると低血糖を繰り返している人や、食後だけ高血糖という人もいます。
ですから、糖尿病という確定診断と治療の際にはHbA1cだけではなく、他の検査も合わせて行います。

では、HbA1cはいくつまでが正常範囲で、いくつから治療が必要になるのでしょうか?
日本糖尿病学会が発表している「改訂糖尿病診断基準とHbA1cに関する記述の原則と実例」によりますと、HbA1cの基準値は下のようになっています。

コントロール評価とその範囲

6.2未満
6.2-6.9
6.9~8.4
6.9~7.4未満 → 不十分
7.4~8.4未満 → 不良
不可 8.4以上

健康診断の結果表をお持ちの方は、結果表の隅に各採血項目の正常値が記入されていることが多いと思いますので、そちらを参考にしてもよいでしょう。

上の糖尿病学会のコントロール評価では少しわかりにくいので補足致しますと、糖尿病の診断基準は、「HbA1c≧6.5%」となります。
診断を受けた人のコントロールの目やすが、上の枠内になるわけです。

診断基準が変わったのか!?

糖尿病の診断基準は、「HbA1c≧6.5%」です。
ここで、昔から健康診断を受けていた方や、定期的に採血チェックをしている方はあれっ?と感じたことでしょう。

(昔は、HbA1cが6.0を超えてはいけなかったような…。)
その通りです。
2010年以前は、糖尿病の診断基準はHbA1c≧6.1%でした。
0.4%高くなっていますね。
なぜでしょうか?診断基準が緩くなった…のではありません。

2010年より以前は、HbA1cといってもJDS(Japan Diabetes Society)値といって、日本国内のみの基準だったのです。
しかし、医療の分野においてもグローバル化は進んでいますから、日本だけ独自路線でいくのは時代遅れです。

そこで、糖尿病の診断・治療・研究におけるグローバル化の重要性を鑑みて、日本糖尿病学会は2010年7月1日から海外で広く使用されているNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値を基準に変更したのです。

ただし、NGSP値はJDS値より0.4%高いため、混乱を招くことが考えられました。
そこで、日常の臨床場面・検診・健康診断においては、一定の広報機関をおいてからNGSP値のみの表示となったのです。

あなたがもし毎年健康診断を受けていたのなら、一時期JDS値とNGSP値の両方が結果表に表示されていたのではないでしょうか?

0.4%の差に注意

さてここで、JDS値からNGSP値への移行に際して問題が出てきました。
上でも述べた通り、0.4%の差です。

糖尿病治療を本格的にしていなかった人がJDS値=6.4%で、医師から食事療法と運動療法の指導を受けていたとしましょう。
NGSP値に移行したあとは6.4%までが正常となりますから、「な~んだ、まだ平気じゃん♪」と勘違いしてしまいます。

JDS値で6.5%なら、NGSP値では6.9%です。
本当はれっきとした糖尿病です。
上の「コントロール評価とその範囲」に当てはめると、一応“良”でギリギリ上限ですが・・・。

もう一つ、既に内服薬で血糖値を下げるものを処方されていたり、インスリン導入に至った人は特に大きな問題に発展します。
JDS値と思い込んで「あれ?今月はHbA1cが高いなあ・・・インスリンを増やしておこう」となったケースです。

高くなった値が0.5%を超えていればも本当にその月はコントロール不良なのですが、0.4%までであれば基準値が変わっただけで、本人のコントロール状態が悪くなったのではありません。
そこでインスリンや薬を増やしてしまうとどうなるでしょう?・・・低血糖を起こしますね。

糖尿病に罹ると、神経障害が起こります。
低血糖の自覚症状すら神経障害によって鈍ってしまい、知らず知らずのうちに低血糖発作を起して意識消失・・・なんてことになりかねません。
特に高齢者は自覚症状の欠けることが多く、一層の注意が必要です。

HbA1cが国際標準化されて、ちょうど5年経過しました。
おそらく、この5年の間で大学病院から近所のクリニックまで、日本中のHbA1cはJDS値からNGSP値に移行が完了したと思います。
しかし、健康診断など過去の結果と比べてどうか検討する必要がある場合は、少し注意しなくてはいけませんね。

HbA1cは、国際基準のNGSP値で6.4%以下!!
6.5%以上で糖尿病!!
これをしっかり覚えておいてくださいね。

参考文献「日本糖尿病学会 改訂糖尿病診断基準とHbA1cに関する記述の原則と実例

参考文献「日本糖尿病学会 ホームページ

参考文献「メディックメディア 病気が見える 糖尿病・代謝・内分泌

この記事を監修した人

監修:宮座 美帆

経歴&活動:
平成25年 臨床工学技士の資格取得。
同年より、広島大学病院に勤務し循環器・呼吸器・代謝内分泌などの疾患を対象に多くの仕事に従事し経験を積む。
現在は医療に関する執筆・監修をこなす医療ライターとしても活動中。
病院・クリニック・企業のHP内コラム等も担当し、読者のみなさまが「病院を受診するきっかけ」作りを積極的に行う。

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