HbA1cが10%を超えると、どうなるの?

糖尿病の診断や治療の評価に使用されるのが、HbA1c。
この値が6.5%を超えると、糖尿病という診断になります。
ところが、この6.5%という時点で何か自覚症状が出ればいいのですが、実は全然症状として現れない。
つまり、困らないのです。

では、困るようになるのはどのくらいかというと、大雑把にラインを引くと10%ではないでしょうか。
もちろん、8%だって困りますが、10%という大台を超えてしまうと、既に様々なところに支障が出てくるのです。

とはいっても、HbA1cが10%になったから気づく・・・というのではありません。
何らかの病気や症状が出て来て、それに困って病院を受診する。
採血の結果で糖尿病ですよ、それもかなり進行しています、と言われて知るというパターン。
何科を受診してもおかしくないくらい、全身に影響が出ているのです。

本人も規則正しい食生活や運動をしていないのは、自覚している。
会社の健診でも前に糖尿病予備軍ですと言われたことがある・・・そんな風に、本当のところは自分でも糖尿病じゃないかな?と思ってはいる。
でも困ったことはない。
美味しいものを食べたいし、運動はしたくないし。

結構、こんな人も多いのです。
では、これらの人達がついに病院を受診するのは、どういう症状が出てからでしょうか?

これらの症状は、血糖が高いことによる直接的な症状ではありません。
よくのどが渇くとかトイレに頻繁にいくとか、聞いたことがあると思います。
しかし、①~⑥の症状は、その段階を既に超えてしまっている、合併症による症状なのです。

ひとつずつ説明していきましょう。
上に挙げた①~⑥の症状は、それぞれこんな糖尿病の合併症による症状なのです。

医師は経験上、これはただの怪我ではないなとか、このむくみ具合はおかしいなとかピンと来ます。
そして血液検査をすると・・・案の定、HbA1cが10%超えという結果なわけです。

これはもう初期とかそんなレベルではありません。
合併症の治療を行いつつ、糖尿病も一刻も早いコントロールが必要です。
①~④までなら、まだ日常生活を送ることが可能です。
ところが、⑤・⑥になると、発症したその時点で命を落とすことだってあるのです。
そう、自分が糖尿病なんて知ることもないままに。

実際にあった、怖い話

実際にあったHbA1c≧10%の人の症例をご紹介しましょう。
40代の男性、トラック運転手のAさん。
仕事柄、どうしても眠気予防のために運転中だらだら食べたり、不規則な生活によって食事時間もまちまちで、糖尿病予備軍と言われていました。
会社は健康診断までは受けさせますが、その後の受診についてはうるさく言うことがなかったため、本人も忙しさと面倒くささにかまけて放置。
Aさんは新しくした靴が足に合わなくて、足の裏にタコができてしまいました。
病院にいくのも面倒なので、カッターで削って対処していました。
ところが、状況はだんだん悪くなる一方。
足が痛くて痛くて、仕方ない。
体重をかけて歩くことができなくなって、ついに病院を受診しました。
診察してみると、なぜかAさんの足は足背(甲の部分)がぶよぶよしていて、何らかの液体が溜まっていそう・・・。
ちょっと針でついてみると、足背から大量の膿が。
足裏のタコから発生した感染症によって、足背と足裏が貫通していたのです!更にすごいことに、レントゲンをとってみると・・・うつっているはずのモノがない。
なんと、骨が溶けてしまっていたのです!!

さすがにこれはスタッフ一同、びっくり。
そして採血の結果が出て納得。
AさんのHbA1cは、12.5%だったのです。
これだけ糖尿病の状態が悪いと、傷口はなかなか治りません。
タコの部分を大きくカット(手術)して毎日傷を洗浄するため、入院による治療が必要になりました。
もちろん、元凶である糖尿病のコントロールも開始。
大きな処置が終わって退院となっても、足そのものはまだ完治していません。
歩くのもびっこを引いてようやくというありさま。
結局Aさんは、たかがタコのために1か月も休業することになったのです・・・。

いかがでしょう?
糖尿病は、困ってからでは遅いということが、おわかりいただけたでしょうか。
Aさんの場合は命に直結する事態には至りませんでしたが、実は全身の血管はボロボロです。
今後心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスク、失明や慢性腎不全に至るリスクを抱えて生きていかなければなりません。
HbA1cが10%を超えると、こんな風になってしまうのですね。
あなたも大事になる前に、潔く事実と向き合いましょう。
さあ、去年の健康診断を出してみましょう。
要注意?それとも、要精密検査?

この記事を監修した人

監修:宮座 美帆

経歴&活動:
平成25年 臨床工学技士の資格取得。
同年より、広島大学病院に勤務し循環器・呼吸器・代謝内分泌などの疾患を対象に多くの仕事に従事し経験を積む。
現在は医療に関する執筆・監修をこなす医療ライターとしても活動中。
病院・クリニック・企業のHP内コラム等も担当し、読者のみなさまが「病院を受診するきっかけ」作りを積極的に行う。

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